【書評】小池百合子都知事も自宅でお母さんを見送りました。家族が覚悟を決めるのが看取りの始まりです。
体験談を聞いたり、読んだりすることが、一番イメージが持てて、自分にもできそうだとか、とても無理だとか、誰かが助けてくれたらもしかしたらできるかもしれないなどと、自己決断の背中を押してくれます。
今回は、たまたま書店で見つけた
小池百合子さんの本の書評を書いてみたいと思いました。
こんにちは
病気があっても自宅に帰りたい!
家で最期を過ごしたい!
退院したい!と思っている患者さまを1日でも早く、
ご自宅で安心して過ごせるようにしたい訪問看護師 ケアマネージャーの西山です!
お母さんの影響
小池百合子さんといえば、おしゃれで強烈、一匹狼でも恐れない強い女性のイメージ。
誰もが知る、現、東京都知事です。
舛添さんは公用車で別荘に行っていたということから始まり、様々なバッシング、不透明を残したまま都知事を辞任していきました。
テレビで見るようなタレントのような議員さんはやっぱり信じられないなというのが私の感想でした。
その後、小池百合子さんが都知事となったわけですが、同じようなイメージを払拭できないなぁと思っていました。しかし、なぜか歯切れの良い語り口で、リーダーとして見ていて気持ちがいい。好印象で都知事をスタートさせ、今も支持されています。
小池百合子さんはお母さんから小学生の頃から言われていたことがあるそうです。
「結婚を目的にしちゃダメ。夫がいつ交通事故であの世に行くかわからないでしょう。いつでも自分の足で歩けるようにしておきなさい」
そんなことを言われて育ったおかげなのでしょうか、今の小池さんの活躍があるのはと思います。なぜか腑に落ちるお母さんの言葉です。
そのお母さんは、肺がんのため88歳でご自宅から旅立ちました。
肺がんの診断は1年半前。
延命治療は望まないどころか、手術、抗がん剤、放射線療法などの治療そのものを受けず、癌と共生していくことを決めたそうです。
徐々に癌は進行していたのでしょう。いよいよ、食事もあまり食べられなくなり、体力の低下もあり、入院することになりました。
入院して、「余命1ヶ月。医療的にできることは、ない。」と言われます。
以前から延命治療を望んでいない。大好きなタバコを吸うこともできない。何よりも小池さん自身が「家で看取りたい」と思ったそうです。
家族が覚悟を決めて、小池百合子さんはお母さんを自宅へ連れて帰ることを提案し、退院しました。そして小池さんやお兄さん、ヘルパーさん、在宅診療医師と看護師による手厚いケアにより、お母さんは最期まで自宅で生き抜きました。
この本から読み解く在宅医療の問題と希望
ゴールが見えることで力が発揮できる
小池百合子さんは、余命1ヶ月と言われて、自宅に連れて帰る覚悟をし、退院してからお母さんが亡くなるまでの12日間を仕事を休むことなく介護されています。
本には、その12日間の出来事を120ページにわたって書いていあります。
もちろん、他者による手厚い介護、緩和治療のおかけであることは言うまでもありません。介護保険を利用していた部分もありますが、かなりの自費での介護もお願いしていたと思われました。
経済的な余裕がなければ自費でのサービスを十分に利用することは大変ですが、このように、余命1ヶ月と言われている場合は、言い方はよくありませんが介護のゴールが数字的に見えていますので、「あと少ししかないのだから、出来る限りの事をしよう」と覚悟が決まりやすいのではないでしょうか?
それは経済的にも、精神的にもです。
本の中に、何度も離床センサー(ベッドから起き上がっていることを伝えるブザー装置)でお母さんの部屋に駆け寄るシーンがあります。
ブザーで呼ばれるたびに、何かあったのか?大丈夫なのか?などの精神的負担もあります。ベッドから転落したり、自分でトイレに行こうと歩いたりして転倒する危険があるからです。
いつ、ブザーがなるかわからない状態で、寝ていますので熟眠はできません。必ず睡眠不足になります。睡眠不足ほど、精神的にも体力的にもきついことはありません。
小池さんの場合は仕事もしていましたので、その辺はヘルパーさんにお願いして、夜間に付き添ってもらうことで工夫されていました。
覚悟を決める
在宅で看取るということは、本人、家族の覚悟が一番大切です。
特に家族の覚悟が一番大事です。
もしも本人からお話ができなくなってしまい、
症状がきつくなってしまった時、
食事が取れなくなった時、
息が弱くなってきている時、
「病院に行った方が楽なのではないか?」と思います。
医療的にすることがないのは変わりないのですが、家族は苦しんでいるのに何もできず、辛く感じてしまいます。
しかし、病院に行っても状況は変わらないのです。
死に向かって全力で生き抜くことが本人とって最高の最期です。
ご本人が「家にいたい」「家で死にたい」と望んでいたことを最期まで支えることが必要です。なので、家族が「そうだ。最期まで家にいたいって言ってたんだ。家にいることを望んでいるんだ」と思えることが必要です。
これを「覚悟」することが家族には必須です。
そして医療、介護チームでそれを全力で支えていきます。
この時に、わかりやすい説明や励まし、十分な信頼関係が必要だと思います。
本に出てくるDr.マリオはまさに、その役割をしています。
こういった在宅看取りのための医師がこれからのニーズにもまだまだ必要であると思います。
また、手厚いケアを看護師が行ってくれます。
本に出てくるように、十分な付き添い看護を医療保険で利用することはほぼ不可能です。しかし、実際にはこういった看護師によるケアや見守りも小池さんの家族を支えていたのは大きいと思います。
これから在宅看取りが増えると言われていますが、現在の看護師不足、保険点数の問題など、まだ十分な解決策は提示されていないと思います。
本の最後にもそのような社会的な問題、2025年問題にも触れています。
いかがだったでしょうか?
在宅看取りをどのように行ってきたのか、どんな覚悟が必要なのか、そのためにどうしたらいいか、たくさんのヒントが詰まっています。実際に看取られたのも2年前のことですので介護保険制度も変更はありませんので参考にされてみるといいと思いました。