【訪問看護】私を変えた「医師との協働」の話。現場は壮絶だけど、温かい。
【訪問看護】
訪問看護ステーションには、医師はいません。
これは病棟のナースステーションに必ずしも医者がいないのと同じです。
必要な時は医者を呼んだら、電話で相談したりしますね。
それと同じだからです。
でも、医者がいなくてどうやって医療を続けていくのか?
訪問看護の仕事がどんなものなのか、
よくわかりませんね。
今回は前回の続きです。
「この人と仕事がしたい」と思わせてくれた、訪問看護ステーションの管理者さんの話、「医師との協働」のことをお伝えしていきます。
病気があっても自宅に帰りたい!
家で最期を過ごしたい!
退院したい!と思っている患者さまを1日でも早く、
ご自宅で安心して過ごせるようにしたい訪問看護師、ケアマネージャーです!
潜在看護師 訪問看護リカレント研修
医師との協働 訪問看護の実際における倫理的課題
診療の補助を行う点で、看護師は医師の指示のもとに行うことが義務付けられています。
在宅療養支援病院、診療所というのがあります。
基本的に自力では外来の通院が難しい状態の方が利用しやすいように整備されています。この診療も医療保険が利用できますので、75歳以上後期高齢者医療では利用額は限度額適応で最大でも1ヶ月14000円程度です。
基本的に電話やメール、FAXで連絡や報告をやり取りすることが多いですが、直接病院へ出向いて医師と会って話をすることもあります。
点滴や注射などの薬剤や物品はその在宅診療医や主治医の病院へもらいに行きます。また、そういった場面で直接話をしたり、相談することもあります。
事例共有
がん末期の男性。70代。家に帰りたい本人と、病院にいてほしい家族でした。
家族は治療をやめて欲しくないという思いで、今後への望みを持っていました。
本人は自分の命の短さはわかっていて、家に帰りたい思いでいました。
鎮痛薬(麻薬など)や在宅酸素などが必要な状態です。
妻は自宅に帰ることへの不安もありました。
余命のことは説明しているが、理解できていないような発言があり、余命は3ヶ月と言っているのに、1年後の外来の予定を気にしたりいていました。
退院する前から、訪問看護は病院へ行き退院前カンファレンスを繰り返していました。 実際に退院してきて、あまりいい状態ではありませんでした。退院から4日後に亡くなりました。 訪問看護師、また、その他のスタッフ(医師、薬剤師、ヘルパーさんなど)では
「できるだけ、家で過ごせるようにする。緊急時の対応は訪問看護がする」などと決まっていました。
しかし… 実際に呼吸が止まった場面で、一気に家族がパニックになります。
呼吸が止まりそうという緊急の連絡から15分後訪問看護師が到着しました。すでに呼吸はしていませんでした。微かに心臓が動いている状態でした。
長女「お父さんはまだ生きています。ほら心臓が動いているでしょう。やだ!お父さんこっちに戻ってきて」
妻「そうよ、諦めたらいけない。まだ心臓が動いている。急におかしくなったのだから。さっきまで話していたのに・・・」
次女「ほら、早くアレやってテレビでもあるでしょ。助けて!」
訪問看護師は言われた通り心臓マッサージを数回行ったが、現時点で延命をするのは難しいし、本来望んでいたことではないという判断で
「お父さんが楽になったのだからゆっくりさせあげましょう」と説得しますが、応じず家族がしがみついて離れようとしない状況でした。
本人は家で最期を過ごすことを望んでいたはずです。
しかし、家族が最後に、パニックになっていまい、心臓マッサージまで行った事例です。
穏やかな死とは・・・ 家族の思いをすり合わせることができませんでした。
訪問看護は退院と同時に開始していますが、十分な信頼関係を築くことができませんでした。また、医師の説明に対して、どのようにしたらいいかを家族とにしっかりと伝える、またその思いを確認していく作業ができていませんでした。
講義をしてくださった管理者の方は、心臓マッサージまで行ってしまったことをとても悔やんでいました。
穏やかに亡くなることができなかった。
信頼関係を作るのは時間ではない。
医師が行う説明に同席して妻や家族にどんな思いか、何を感じているのか、何が不安なのか、何を望んでいるのか?確認しておくことができなかった。
その話をされているその管理者さんは、本当に悔しそうで、本当に真剣に患者さんに向き合っていることが伝わってきました。
患者さんのエピソードを語るとき、本当に患者さんがそこにいるかのように思いが寄り添っていると思えました。
こんなに真剣に患者さんと向き合える!
こんなに一生懸命になれる看護師がいる!
こんな大変なことも一生懸命になれる!
私にとって衝撃でしたし、心が動いた瞬間でした。
その管理者さんを頼りに就職したわけですが、「類は友を呼ぶ」とはまさにこれだと思いました。
私が入職した時は全部で6人の小さなステーションでした。
しかし、みんなそれぞれキラキラ輝いていました。
一人も意地悪な人もいなし、みんな温かい人たちでした。
訪問看護の認定看護師もいました。
ここで思いっきり勉強してみたい!と思って、3年。
パートから常勤になり、ケアマネージャーとしても働かせてもらった。
もちろん家庭との両立や、複雑な患者さん、終末期の看護…色々な苦労はあっても、不思議と「辞めたい」と思わなかった。
辛くても、そこに患者さんがいると不思議と笑顔になれる。
訪問看護はダイレクトにじっくり患者さんと関われることがいいところで、患者さんからいつもエネルギーをもらって自分が笑顔になれる。
そのエネルギーで患者さんの生活を支える。病気の苦痛から少しでも解放されるようにケアすることができるんだと思っています。